塗りを極める

皆様の知らない奥の深い塗料の世界をご紹介します。
プロユースからDIYまでお役立て下さい。

建物の外壁工事から、日曜大工などのDIY、さらには趣味の絵画やプラモデル…と、様々な場面で塗料は使用されています。
でも、改めて「塗料とは?」と言われてもピンとこない方も多いはず。
このページでは70年に渡り塗料を扱い続けてきた者として、身近な塗料の世界についてご紹介します。

そもそも「塗料」って何でできてるの?

塗料は、様々な色の顔料と樹脂、添加剤と溶剤によって構成されています。
ハケなどで塗った後に溶剤は揮発してなくなり、残された顔料と樹脂が混ざったものが塗面となります。

顔料は、塗料の色味を出すもので昔は貝殻なども使用されていましたが、現在では石油から作られる有機顔料や、チタンやアルミニウムなどの金属成分を含む無機顔料が主流です。
様々な色の塗料が販売されていますが、使用する場所や塗る対象に合わせて色を混ぜ合わせる(「調合」する)ことで、無限の色を作り出すことが可能です。

樹脂は塗面となる部分で、塗装する目的によって硬さや耐久性などが求められます。
多くの種類の樹脂があり、そのほとんどが石油を原料としております。
ペンキや塗料、絵の具などの「アクリル」や「ウレタン」など表記は樹脂のことを指しています。
漆器で使用される漆も天然の樹脂の一種です。

添加剤は、主に「塗りやすさ」や「きれいな塗面」のために加えられており、防水性を高めるためのものや、電気を通すものや 反対に通さないもの、さらには落書き防止剤などの添加剤もあります。

最後に溶剤ですが、顔料や樹脂などの粘度調整や仕上がりをよくするため、塗った後で乾く速度を調整するために使用されます。
揮発性の高いシンナーや灯油系の油、アルコールなどが有名ですが、最近は健康と環境を考えた水性の塗料も使用されることが多くなっています。

種類の多い「耐○性」塗料

塗料の目的は大きく分けて、美観・保護・その他の機能があります。

美観は色を塗ることで彩りを与えたり、色あせたものを再生したりします。周囲とのコーディネートやイメージチェンジなどもあります。

塗面の保護だけでなく、用途に合わせた添加剤などにより、塗面にプラスアルファの機能を持たせています。

木や鉄など、ほとんどの物が屋外に放置されると風雨や日光(紫外線)により劣化したり腐食したりします。
それを保護するために、塗料には用途に合わせて塗ったものを守る目的があります。

外壁などの耐水性や対候性・耐紫外線(UV)・耐火性、金属だと防錆や耐腐食性の高いもの、室内だと防カビや遮電、耐薬品性などがあり、さらにそれらを保護するために自動車のクリア塗装などの傷に強い塗料も存在します。

その他の機能として、プリペイドカードなどの裏面の磁性体を含んだもの、下地の色を隠すための隠蔽性の高い塗料もあります。

塗り方いろいろ

塗料の種類や塗る目的物により様々な塗り方があります。

皆様になじみがあるものと言えば、ペンキなどをハケで塗るのがポピュラーでしょう。
ホームセンターなどで販売されているペンキも、ハケなどで塗ることを前提として濃さが調整されています。

建物の外壁や、自動車の塗装など広い範囲を塗装する場合はスプレーやエアガン(エアブラシ)などを使用して塗装を行います。
スプレーを使用する場合は空気圧が低いと塗料が目詰まりを起こすので、最適な濃度にするために「うすめ液」と呼ばれるシンナーなどの希釈剤を使用します。

また、塗装をした後に、焼き付けを行うことで塗面を強化するものもあります。

最近は溶剤を用いず、表面に樹脂を吹き付けて電気処理などで硬化させる「粉体塗料」も登場しており、溶剤を使用しない環境に優しい塗料として自動販売機などで使用されています。

これらは「塗る」塗料ですが、塗装を行う前に使用するシーリング材やすき間やデコボコを埋めるパテも塗料に分類されます。

塗料のプロが教える「塗りのコツ」

1.塗料は用途に合ったものを使用しましょう。
 塗料に含まれている溶剤によっては、プラスチックを溶かしたりするものもあります。
 「防カビ効果」「防腐効果」「防サビ効果」など用途に合わせた添加剤も含まれており、用途以外の使用でトラブルが起きる可能性もあります。
 必ず用途に塗料を使用して下さい。

2.塗装するときは汚れても良い格好で作業しましょう。
 衣服に付着した塗料は落とすことができないものと考えて下さい。
 塗装を行う際は、汚れても良い服装、エプロンや手袋を使用し、シンナーを直接吸い込まないためにマスクも準備して下さい。
 ペンキの周辺なども新聞紙などで汚さないように注意しましょう。

3.塗装は天気の良い日に行いましょう。
 塗装を行った後は乾燥させる必要があります。湿度が高い日や気温の低い日に塗装を行うとはがれたり、乾燥不良できれいな塗面になりません。
 塗装を行う際は晴れた日、湿度が低い日を選んで行いましょう。

4.何事も「急がば周れ」の精神で
 できることなら一塗りでサッと仕上げたいところですが、そのためにハケにたっぷりとペンキを付けてしまうと垂れてしまったり塗面がひび割れたりすることがあります。
 きれいに塗るためのコツは「薄く、何度も塗り重ねる」ことです。
 ペンキが濃いと感じた時は少し薄めて、何度も塗り重ねた方がきれいに仕上がります。
 薄める際はうすめ液の種類に注意して下さい。
 スプレーも同様で、ゆっくりと「プシュ~」と動かすよりも、数回に分けて「サッ、サッ」と塗り重ねていくことがきれいに仕上がるコツです。